【中小企業白書2025年度版-事例紹介③】東海バネ工業に学ぶ海外展開戦略
職人技術の差別化戦略
東海バネ工業株式会社の事例は、中小企業診断士試験で頻出の「競争戦略論」の典型例です。同社は1944年の創業以来、「多品種微量生産」という独自のポジショニングで市場における差別化を図ってきました。生産ロット平均5個という極小ロットでの受注生産は、大手企業が参入しにくいニッチ市場を狙った戦略的選択です。

人工衛星用の極小ばねから東京スカイツリーの制振装置用巨大ばねまで、技術の幅広さが同社の競争優位性の源泉となっています。中小企業診断士として学ぶ「コア・コンピタンス経営」の考え方が、ここに見事に表れています。
海外展開の戦略的アプローチ
同社の海外展開戦略は、中小企業診断士試験の「国際経営論」で学ぶ理論を実践した好例です。2019年からの段階的な海外進出は、リスク管理の観点からも適切な判断でした。ジェトロの「新輸出大国コンソーシアム」を活用し、米国やタイへの販路構築を実現したプロセスは、公的支援機関の効果的活用例として注目すべきポイントです。
夏目社長の「海外での認知度を高めれば世界でも存在価値を発揮できる」という発想は、ブランド戦略の重要性を示しています。技術力という無形資産を海外市場で価値に変換する戦略的思考は、診断士として企業支援を行う際の重要な視点です。
市場選定の科学的手法
同社の対象国・地域選定プロセスは、中小企業診断士が学ぶ「マーケティングリサーチ」の実践例です。工作機械業界を重点ターゲットとし、業界を牽引するドイツ・スイスに加え、成長期待の台湾を候補に追加した判断は、市場分析に基づく合理的な選択でした。
中小機構の「海外展開ハンズオン支援事業」を活用したビジネスモデル仮説の立案は、仮説検証型のアプローチを採用しています。EUの非関税障壁という課題に直面しながらも、2社との商談実現に至った経緯は、市場参入戦略の困難さと成功要因を示す貴重な事例です。
組織能力の向上と人材育成
東海バネ工業の人材育成への取り組みは、中小企業診断士試験の「組織論」「人的資源管理」で学ぶ理論の実践です。職人の養成システム確立と若手への技能伝承は、暗黙知の形式知化という知識経営の観点から重要な取り組みです。
ジェトロの「中小企業海外ビジネス人材育成塾」への担当者派遣は、組織学習能力の向上を図る戦略的な人材投資です。海外事業戦略立案やプレゼン資料作成、商談スキルの習得は、グローバル展開に必要な組織能力の構築を意味しています。
中期ビジョンと持続的成長
「世界から相談される会社になる」という中期ビジョンは、企業の存在意義を明確にした優れた戦略目標です。中小企業診断士として学ぶ「経営戦略論」において、ビジョンの重要性とその実現に向けた具体的な取り組みの一貫性が評価できます。
同社の事例は、中小企業が限られた経営資源を効果的に活用し、グローバル市場で競争優位性を構築する方法を示しています。中小企業診断士を目指す皆様にとって、理論と実践を結びつける貴重な学習材料となるでしょう。

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KEC中小企業診断士講座マネージャー佐野
引用:中小企業白書2025年度版