【中小企業白書2025年度版-事例紹介⑭】輸出管理で築く経営基盤

2025年度版の中小企業白書では、技術系中小企業が経済安全保障に対応しながら、持続的な成長基盤を整えていく事例が紹介されています。今回は京都府の株式会社光響が取り組む「輸出管理体制の強化」をテーマに、企業の実例をもとに中小企業診断士として学ぶべき視点を解説します。専門商社でありながら自社製品も展開する同社の取組は、地政学リスクが高まる今、すべての中小企業にとって示唆に富む内容です。
成長とリスク
株式会社光響は、レーザー・光学関連の専門商社として海外300社から製品を仕入れ、国内研究機関等へ販売しています。自社で製造するビームプロファイラやフェムト秒レーザー加工機などもあり、技術系企業としての評価も高い企業です。取扱製品の多くは輸出管理対象であり、返送や将来の輸出に備えた体制整備が求められていました。
中小企業診断士試験では、〈経営戦略〉や〈リスクマネジメント〉の分野で「成長と規制対応の両立」が問われます。まさにこの事例は、成長とともに複雑化する外部環境へどう対応すべきかの教科書的な実例です。
支援制度活用
光響は経済産業省の「中小企業等アウトリーチ事業」を活用し、アドバイザーの指導の下、輸出管理体制を整備しました。内部規程の策定、承認プロセスの多段階化、部署横断の体制構築により、単なるルール整備にとどまらず、全社的な輸出管理意識の醸成を図りました。従来は管理部門3名で担っていた輸出管理を、8名体制に増強した点も特徴的です。
ここでは、〈法務・コンプライアンス〉〈人事・組織〉などの分野における診断士の知識が活用できます。支援制度を活かした仕組みづくり、組織体制の見直しは、まさに診断士が得意とする支援分野です。
組織で守る
光響の取組が成功した要因の一つが「社内意識の統一」です。営業部門では、かつてスピードを優先しがちでしたが、今では正確な輸出管理の理解が進み、部門間の認識ギャップが解消されました。全社での研修も強化され、最新の法令モニタリング体制も構築されています。
診断士試験で学ぶ〈組織論〉では「機能間連携」や「意識改革」の重要性が強調されます。この事例は、それを実践で証明した好例であり、診断士として現場支援に活かすべき視点が詰まっています。
変化への備え
予測不能な世界情勢の変化に備え、光響は調達先の多様化も進めています。これまで中国から仕入れていた製品の一部を、韓国・台湾にシフトするなど、サプライチェーンの見直しを加速中です。CEOの言葉通り、「どんな状況でも耐えられる体制」は、単なる危機対応ではなく、継続的な事業強化の鍵となります。
このような〈サプライチェーン・マネジメント〉〈経営戦略の柔軟性〉は、診断士の実務支援においてますます重要性を増しています。変化に強い経営体制づくりを支援する立場として、診断士の果たす役割は今後さらに広がるでしょう。
試験との接点
株式会社光響のような事例は、診断士試験のあらゆる分野と結びついています。経営戦略、法務、組織、人材育成、リスク管理、コンプライアンスなど、診断士の学びは単なる理論ではなく、企業の成長や変革に不可欠な知識として活用できます。
KEC中小企業診断士講座では、このようなリアルな経営事例を教材に取り入れ、実務的な視点での理解を深める講義を実施しています。資格取得後に即戦力として活躍できる力を身につけるには、こうした事例分析が不可欠です。
まとめ
成長企業である光響が直面した輸出管理強化の取組は、経済安全保障時代における中小企業のあるべき姿を示しています。中小企業診断士として、こうした変化への対応力を身につけることは、経営支援の現場で大きな力となります。国家資格としての信頼と実務に活きる知識を両立した中小企業診断士。ぜひその第一歩を、KECの講座で踏み出してみてください。
KEC中小企業診断士講座マネージャー佐野