【中小企業白書2025年度版-事例紹介㉓】外国人材と挑む技術革新の軌跡


はじめに
中小企業診断士試験では「経営戦略」「組織論」「グローバル経営」など、多様性を活かした経営改革が学びの重要テーマとなっています。今回紹介するのは、山形県のスズキハイテック株式会社が、外国人材とともにイノベーションを実現し、V字回復を果たした事例です。これほど明確に“人材戦略”と“企業成長”の関係が見える例は貴重です。
危機と決断
リーマン・ショックや震災の影響で売上が約16億円にまで低下した同社。社長は「このまま受託型では生き残れない」と判断し、製品の仕様から提案できる“開発型企業”への転換を図ります。まさに診断士試験で学ぶ「競争優位性の再構築」や「製品ライフサイクル管理」などの考え方が実務で活きた局面です。
外国人材採用
転機となったのが、2015年の外国人材の採用。メキシコ法人設立に向けて採用した高度外国人材が成果を出したことをきっかけに、外国人採用を本格化。今では全社員の約4割に当たる93名が外国人、うち40名以上が博士号取得者という構成に。国際的な人材戦略と多様性への理解は、診断士の「人的資源管理」「グローバル戦略」などに深く関わるテーマです。
定着への工夫
採用だけでなく、定着支援にも全力です。文化理解の共有、日本語教室の開講、生活支援はもちろん、結婚後は配偶者の雇用、育児・教育支援まで行うという徹底ぶり。経営トップが自ら面談・対応することで、外国人材の離職率は非常に低く保たれています。
これは、診断士試験で重視される「働き方改革」「ダイバーシティマネジメント」「エンゲージメント向上」といった概念のリアルな実践です。
融合が革新に
多様な文化や価値観、そして高い専門性を持つ外国人材と、日本人従業員の技術と経験が融合したことで、同社には「開発力」と「挑戦文化」が根づきます。その結果生まれたのが、世界初となる自動車部品の革新的なメッキ技術。大手自動車メーカーで採用され、売上は4年で11億円から42億円にV字回復。2029年には92億円を見込んでいます。
診断士の役割
この事例から学べるのは、外国人材の活用が単なる労働力確保ではなく、イノベーションの核になり得るということ。そして、そこには「経営理念」「人材戦略」「組織文化」の設計が密接に関係しています。中小企業診断士はまさにこうした企業変革の設計と推進を担う存在です。
KEC中小企業診断士講座では、こうした実例をもとに、実務で本当に役立つ知識を体系的に学べるカリキュラムを提供しています。あなたの学びが、次の企業イノベーションを支える力になります。
KEC中小企業診断士講座マネージャー佐野
引用:中小企業白書2025年度版