【中小企業白書2025年度版-事例紹介⑬】古木がつなぐ循環型ビジネス

中小企業白書2025年度版では、環境配慮型ビジネスに挑む地域企業のユニークな取組が多数紹介されています。その中でも注目を集めるのが、長野県長野市の株式会社山翠舎です。建具店からスタートした同社は、「古木」や「古民家」を再資源化することで、サーキュラーエコノミーの実現を目指しています。今回は、中小企業診断士の学びがこの事例でどのように活かされるのかを、診断士講座の視点から解説します。
もったいない精神
山翠舎は1930年創業の老舗。現在は古材(古木)を活用した店舗内装や、古民家の再生・移築を手がける企業へと進化しています。背景には、良質な木材が建物の解体と共に廃棄されていく現実への問題意識がありました。社長自身の原体験から、「もったいない」という想いがビジネスモデル創出の出発点となったのです。
中小企業診断士試験では〈経営戦略〉において「経営理念・ビジョンに基づいた事業構築」が問われます。この事例は、理念と経営資源を組み合わせた持続可能な経営の好例と言えるでしょう。
既存技術を活用
山翠舎の強みは、既存の建築技術をベースに古木を利活用する事業を展開した点にあります。2006年には古木の買取販売を開始、2009年には設計・施工一体型の古木内装サービスも立ち上げました。もともとの工務店としての技術を活かしながら、ブランディングと商品開発を進めた結果、独自の市場ポジションを確立しました。
このように、保有技術の再定義と差別化を活かした戦略は、〈事業展開〉や〈競争優位性〉といった診断士試験の核心テーマに直結します。
地域と環境貢献
山翠舎の取組は、空き家対策や地域資源の活用にも貢献しています。古民家を移築・再生することで、地域の伝統建築を未来につなぎ、地方創生の一翼を担っています。2015年には日本最大級の古木倉庫を開設し、現在では年間50〜60件の施工実績を誇ります。
これはまさに〈地域資源活用〉と〈サステナビリティ経営〉の体現です。中小企業診断士の実務でも、こうした地域密着型の再生事業において、経営戦略だけでなく地域活性化や自治体連携の視点が重要となります。
循環型社会へ
「壊されるのが現実なら、全てを回収して再利用したい」と語る山上社長の言葉には、理想と現実をつなぐ強い信念が宿っています。現在では国内だけでなく海外への展開も視野に入れ、古民家と古木を中心にしたまちづくりを提案する「古民家デベロッパー」としての事業展開を進めています。
このような多角的な展開は、〈新事業開発〉〈海外市場開拓〉〈SDGs経営〉といったテーマで診断士が深く関与できる分野です。診断士資格で得られる知識や視点は、こうした挑戦を支える実践的ツールになります。
学びの活用
山翠舎のような企業が取り組む循環型ビジネスは、社会課題を解決しながら事業性も追求するモデルです。中小企業診断士は、まさにその架け橋として、理論と現場をつなぐ存在として活躍できます。
KEC中小企業診断士講座では、このような実践事例を学びに取り入れ、「現場で役立つ診断力」「地域企業とともに歩む視点」を養成しています。資格取得後も社会に貢献し続けるプロフェッショナルを育てる講座です。
まとめ
中小企業白書に掲載された山翠舎の取組は、環境・地域・伝統の融合による新しい価値創造の事例です。中小企業診断士として学ぶ知識や分析力は、こうした企業の支援や新事業創出に直結します。皆さんもぜひ、この事例をヒントに、自分の未来と地域社会の未来を重ねてみてください。
KEC中小企業診断士講座マネージャー佐野
引用:中小企業白書2025年度版