【中小企業白書2025年度版-事例紹介⑮】SDGsで差別化


中小企業白書2025年度版に掲載された「雪ヶ谷化学工業株式会社」の取り組みは、まさに中小企業診断士が学ぶ理論と実務の融合を体現した事例です。本記事では、企業のSDGs経営の実践と、それが生み出す波及効果について解説しつつ、中小企業診断士としてどのように活かせるのかを掘り下げていきます。
事例の背景
東京都品川区に本社を構える雪ヶ谷化学工業株式会社は、化粧品や医療用途などに使用されるゴム製スポンジの製造で世界シェア60%を誇る企業です。原料の切り替えによりアレルギー対策や耐久性の改善に成功しましたが、その一方で模倣品との競争やCO2排出の課題を抱えていました。そこで注目したのが「SDGs経営」でした。
SDGsの着眼
社長の坂本氏は、外部勉強会をきっかけにSDGsへの取組が競争優位となる可能性を見出します。天然ゴムの使用による脱炭素化だけでなく、その生産現場での児童労働や強制労働といった人権問題にも目を向け、フェアトレードの原料を選定。ここには「倫理的消費」や「企業の社会的責任(CSR)」といった中小企業診断士試験の学習内容が直結しています。
社内展開
2020年には社内にSDGsプロジェクトチームを発足させ、全従業員を巻き込んだ取り組みに発展。勉強会、ポスター、ワークショップを通じて社内の理解を深め、「SDGs=経営の本質」と捉える意識改革を実現しました。このような「変革のマネジメント」や「組織行動論」も診断士試験で学ぶ重要領域です。
製品化と成果
技術開発により天然ゴムからアレルギー物質を除去し、2021年に新製品「サステナブルスポンジシリーズ」を市場に投入。この製品は環境配慮だけでなく、フェアトレード対応という付加価値が高く評価され、既に10社16製品に採用されています。こうした市場志向型開発は、「マーケティング戦略」や「製品ライフサイクル理論」といった学びに基づいて分析できます。
波及効果
雪ヶ谷化学工業のSDGs経営は、社外にも大きな波を生み出しました。メディア露出の増加、求人応募数の向上、他業種からの共感・連携の拡大に加え、自社開発の「フェアトレード天然ゴムマーク」が他7社に広がるなど、まさに「社会的価値と経済的価値の両立」を成し遂げた好例です。これらは中小企業診断士に求められる「企業の中長期ビジョン策定支援」に活用できる知見です。
診断士の視点
中小企業診断士がこのような企業の支援に関与する際には、「環境経営」「サステナブル経営指標」「サプライチェーンマネジメント」など、幅広い専門知識が求められます。また、事業戦略だけでなく、社内浸透・人材育成・外部との連携といった観点から、統合的な視点を持つことが求められます。
まとめ
雪ヶ谷化学工業の事例は、単なる環境対応にとどまらず、SDGsを軸とした新たな差別化戦略であり、中小企業が取るべき進化の方向を示しています。中小企業診断士として、こうした動きを理解し支援することで、企業価値の向上や地域経済の活性化にも寄与できるのです。
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KEC中小企業診断士講座マネージャー佐野
引用:中小企業白書2025年度版