令和8年度 中小企業診断士 第1次試験 「経営法務」全体レビュー
令和8年度 中小企業診断士 第1次試験
「経営法務」全体レビュー
平均得点、問題別正答率、難問ランキング、受験生の解答傾向を分析し、 今回の試験で明らかになった課題と、次年度に向けた具体的な学習方法を解説します。
令和8年度中小企業診断士第1次試験「経営法務」について、 協会公表の正解・配点、本試験問題と、KEC自己採点フォーム254件の回答データをもとに分析しました。
今年度は全25設問・各4点の100点満点です。 基本・標準問題と難問の差が大きく、 「取るべき問題を確実に取れたか」が合否を左右する試験 となりました。
01全体結果
平均点ベースでは60点の科目合格ラインに届かず、 今回の回答データから見ると、 決して得点しやすい試験ではなかったと評価できます。
一方で、正答率80%を超える問題もあるため、 全体が一様に難しいというより、 得点すべき基本・標準問題と難問との差が大きかった ことが特徴です。
- 会社法・民法に低正答率問題が集中した
- 知的財産権は比較的高い正答率で、得点源となった
- 原則と例外、制度間の違いを正確に区別する力が必要だった
- 法改正・最新制度を踏まえた出題も見られた
- 英文契約問題も「英語だから捨てる」ほど難しくはなかった
02問題別正答率
| 問題 | 正解 | 正答率 | 難易度目安 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | ウ | 56.3% | 標準 |
| 第2問 | ア | 40.2% | やや難 |
| 第3問 | イ | 16.1% | 超難問 |
| 第4問 | ウ | 46.9% | やや難 |
| 第5問 | ウ | 51.2% | 標準 |
| 第6問 | ウ | 24.8% | 難問 |
| 第7問 | ウ | 34.3% | 難問 |
| 第8問 | ア | 59.1% | 標準 |
| 第9問 | ウ | 72.0% | 易 |
| 第10問 設問1 | ウ | 44.5% | やや難 |
| 第10問 設問2 | ウ | 59.1% | 標準 |
| 第11問 | ウ | 76.4% | 易 |
| 第12問 | ア | 80.3% | 易 |
| 第13問 | イ | 87.4% | 取りたい |
| 第14問 | ウ | 67.7% | やや易 |
| 第15問 | ア | 57.5% | 標準 |
| 第16問 | ウ | 55.9% | 標準 |
| 第17問 | イ | 33.1% | 難問 |
| 第18問 | ウ | 54.3% | 標準 |
| 第19問 | ア | 75.2% | 易 |
| 第20問 | イ | 53.1% | 標準 |
| 第21問 | エ | 29.9% | 難問 |
| 第22問 | イ | 22.4% | 超難問 |
| 第23問 | ア | 34.3% | 難問 |
| 第24問 | エ | 57.5% | 標準 |
03難問ランキング TOP10
株主名簿、会計帳簿、株主総会議事録、取締役会議事録などについて、 閲覧・謄写請求の要件や拒絶事由を正確に区別する問題でした。
正解「イ」は41名でしたが、最多回答は「ウ」の128名で、 回答者の50.4%が同じ誤答を選択しました。
- 各種書類の閲覧請求要件を混同
- 裁判所の許可が必要かどうかの整理不足
- 拒絶事由の違いを正確に覚えていない
限定承認、熟慮期間、相続放棄後の財産保存、 単純承認などの細かなルールを比較する問題でした。
正解「イ」に対して、「ウ」を68.9%が選択しており、 特定の誤答肢に大きく集中しました。
- 相続法の原則・例外整理が不十分
- 細かな条文知識で迷いやすい
- 難問として見切る判断も必要
監査等委員会の構成、取締役の選任、 重要な業務執行の委任、任期などを問う問題でした。
- 会社機関設計の比較整理不足
- 監査役会設置会社との混同
- 任期や社外取締役要件など細部で失点
使用者責任、工作物責任、慰謝料請求権、 未成年者の責任能力などを比較する問題でした。
- 不法行為の複数制度を混同
- 判例知識も必要
- 原則・例外を具体例で理解する必要がある
盗品、遺失物、善意・無過失、立証責任、 不動産への適用可否などを問う問題でした。
- 即時取得の成立要件を断片的に暗記
- 盗品・遺失物の扱いを混同
- 判例上の立証責任まで整理できていない
正解「ウ」に対して、誤答「エ」を61.0%が選択しました。 ストックオプションの行使と、その後の株式売却の扱いがポイントでした。
- 取引規制の適用除外を曖昧に理解
- 取得と売却の違いを区別できていない
- 一見もっともらしい選択肢に引っ張られやすい
労働契約への適用、意思表示の取消し、 不作為を利用した契約条項、適格消費者団体などが問われました。
- 取消し要件を正確に理解できていない
- 条文上の用語の違いで迷いやすい
- 制度の主体・要件を比較して整理する必要がある
株式・持分の譲渡、損益分配、業務執行、役員任期などを 株式会社と合同会社で比較する問題でした。
- 株式会社と持分会社の制度を個別暗記している
- 比較形式になると混乱しやすい
- 会社形態別の一覧表学習が有効
工業所有権保護に関するパリ条約の規定について、 商号、サービス・マーク、特別取極などを問う問題でした。
- 国内法と国際条約を混同
- 条文レベルの知識が必要
- 知財分野でも国際条約はやや差がついた
株式会社・持分会社における解散の訴え、 原告適格、持株・議決権要件、デッドロックなどを問う問題でした。
- 株主権に関する細かな要件で迷いやすい
- 「当然に認容される」など強い表現への注意が必要
- 条文と実務的な結論を区別する必要がある
04正答率が高かった問題
| 順位 | 問題 | 主なテーマ | 正答率 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 第13問 | 商標法 | 87.4% |
| 2位 | 第12問 | 不正競争防止法 | 80.3% |
| 3位 | 第11問 | 実用新案法 | 76.4% |
| 4位 | 第19問 | 民法・売買 | 75.2% |
| 5位 | 第9問 | 著作権法 | 72.0% |
| 6位 | 第14問 | 意匠法 | 67.7% |
特に知的財産権分野では、第9問・第11問・第12問・第13問・第14問が 比較的高い正答率となりました。
今年度の結果から、 知的財産権を安定した得点源にすることが60点確保の重要な戦略 と考えられます。
05受験生の解答傾向
① 会社法は制度間の比較で正答率が低下
株式会社と合同会社、株主の閲覧請求、 監査等委員会設置会社など、制度を横断的に比較する問題で苦戦が見られました。
単独の用語を覚えるだけでなく、 「誰が・どの条件で・何をできるのか」 を比較整理する必要があります。
② 民法は「原則・例外」で差がついた
即時取得、不法行為、相続などで低正答率となった一方、 売買の第19問は75.2%でした。
民法全体が難しいのではなく、 原則を理解したうえで、例外や判例まで整理できているか が差になっています。
③ 知的財産権は比較的安定した得点源
著作権、実用新案、不正競争防止法、商標法、意匠法は、 多くの受験生が比較的安定して得点しました。
経営法務で60点を狙ううえでは、 知財分野を苦手科目にしないことが重要です。
④ 一つの誤答肢に集中する問題が多い
第3問、第7問、第22問では、多数の受験生が同じ誤答肢を選択しました。
これは知識不足だけでなく、 「ほぼ正しそうな選択肢」の一部分の誤りを見抜けていない ことを示しています。
⑤ 英文問題は十分に得点可能
第24問の秘密保持契約(NDA)は正答率57.5%でした。 英語問題というだけで捨てる必要はありません。
Confidential Information、Receiving Party、Disclosing Party、 prior written approvalなど、 契約書の頻出基本語を押さえることが有効です。
06今回の結果から見える受験者の課題
課題1 会社法を単独論点で暗記している
取締役会、監査役、監査役会、監査等委員会などを別々に覚えるだけでは、 比較問題に対応しにくくなります。
機関設計・人数・任期・選任方法・権限を一覧表で整理する必要があります。
課題2 原則と例外の区別が曖昧
経営法務では「原則として○○だが、例外として△△」という制度が非常に多くあります。
正解肢を丸暗記するのではなく、 原則・例外・具体例の3段階で整理することが重要です。
課題3 似た制度を横並びで比較していない
特許・実用新案・意匠・商標、 株式会社・合同会社、 単純承認・限定承認・相続放棄など、 似た制度を比較して覚える必要があります。
課題4 法改正・最新制度への対応が不足
第8問では、2024年4月施行の金融商品取引法改正に関連し、 四半期報告書制度の廃止と四半期決算短信への一本化が出題されました。
経営法務は過去問だけでなく、直前期の法改正確認が必要です。
課題5 難問に時間を使いすぎる
正答率16.1%や22.4%の問題を本試験中に完全に判断しようとすると、 取るべき基本問題を解く時間が失われます。
60分という短い試験時間では、 「分からない問題を一度保留する」判断が非常に重要です。
07次年度に向けた具体的な学習方法
会社法は比較表で整理する
会社法は文章だけで暗記するのではなく、 次の項目を横並びで整理します。
- 株式会社と合同会社
- 取締役会設置会社と非設置会社
- 監査役会設置会社と監査等委員会設置会社
- 株主総会・取締役会・監査役の権限
- 役員の人数・任期・選任方法
- 各種書類の閲覧・謄写請求要件
「誰が」「何を」「どの条件でできるのか」 を一枚の表で整理すると効果的です。
知的財産権を確実な得点源にする
特許、実用新案、意匠、商標、著作権、不正競争防止法について、 次の観点で比較します。
- 何が保護対象か
- 登録が必要か
- 審査制度があるか
- 存続期間は何年か
- 更新が可能か
- 第三者が請求できる制度はあるか
- 権利行使に事前手続が必要か
今年度の正答率から見ても、 知財分野は60点確保の中心に据えたい分野です。
民法は「原則 → 例外 → 具体例」で理解する
民法は条文を丸暗記するよりも、 具体例と結び付ける方が得点につながります。
- 消滅時効
- 即時取得
- 契約解除
- 売買・契約不適合責任
- 不当利得
- 不法行為
- 相続の承認・放棄
各論点について、 原則を一文で説明 → 例外を追記 → 過去問の具体例で確認 という流れで学習してください。
過去問は全選択肢の正誤理由まで確認する
経営法務では、正解番号だけを覚える学習は効果が限定的です。
- どの部分までは正しいか
- どの言葉・数字・主体が誤っているか
- どう直せば正しい文章になるか
- 原則と例外のどちらを問うているか
第3問や第7問のように、多くの受験生が同じ誤答に集中する問題ほど、 誤答肢を教材として復習する価値が高いといえます。
法改正は試験直前期にまとめて確認する
法律は改正されるため、古い過去問だけでは最新制度へ対応できません。
- 会社法
- 金融商品取引法
- 知的財産法
- 民法・相続法
- 消費者契約法
- 公益通報者保護法
直前期には、 「施行日」「変更前→変更後」「試験で狙われそうな違い」 をまとめて確認してください。
英文契約問題は頻出単語を押さえる
英文契約を全文正確に訳す必要はありません。 頻出表現を覚え、設問に必要な部分を探す練習が有効です。
- Confidential Information:秘密情報
- Disclosing Party:開示当事者
- Receiving Party:受領当事者
- prior written approval:事前の書面による承諾
- third party:第三者
- breach:違反
- obligation:義務
60分で「取る問題・捨てる問題」を判断する
今年度の結果からは、超難問に時間をかけるより、 基本・標準問題を確実に取る方が得点効率は高いことが分かります。
- 知識だけで即答できる問題を最優先
- 2択まで絞れた問題には印を付けて後から戻る
- 細かい条文知識が必要な問題は一度保留する
- 1問に3分以上かけない
- 最後の5分は未回答とマーク確認に使う
※正答率、平均得点および解答傾向は、 KEC自己採点フォーム254件の回答データに基づく集計であり、 実際の全受験者の結果とは異なる場合があります。



