令和8年度 中小企業診断士 第1次試験 「財務・会計」全体レビュー
令和8年度 中小企業診断士 第1次試験
「財務・会計」全体レビュー
平均正答率、問題別正答率、難問ランキング、受験生の解答傾向を分析し、 今回の試験で明らかになった課題と、次年度に向けた学習方法を解説します。
令和8年度中小企業診断士第1次試験「財務・会計」について、 試験問題・正答およびKEC自己採点フォームの回答データをもとに分析しました。
今年度は、基本的な会計知識を確実に得点する力に加え、 限られた時間内でファイナンスの応用問題を処理する力 が強く求められる試験となりました。
01全体平均と総評
令和8年度の財務・会計は、 基本論点を確実に得点しつつ、応用計算問題で差がつく試験 だったと考えられます。
前半では、法人税、消費税、貸借対照表表示、有形固定資産、 負債、連結会計など、制度会計を中心とした問題が出題されました。
後半では、NPV、ポートフォリオ理論、ROE、企業価値評価、 残余利益モデル、オプションなど、 ファイナンス分野の出題が続きました。
- 基本的な会計知識を正確に判断する力が求められた
- 計算問題では、条件整理と計算手順の正確さが重要だった
- ファイナンス分野では、公式の意味まで理解しているかが問われた
- 60分以内に解き切るための問題の取捨選択が合否を左右した
02問題別正答率
| 問題 | 主な出題テーマ | 正答率 |
|---|---|---|
| 第1問 | 法人税 | 50.3% |
| 第2問 | 消費税の会計処理 | 76.1% |
| 第3問 | 勘定科目と貸借対照表表示 | 35.7% |
| 第4問 | 金銭債権・貸倒引当金 | 48.1% |
| 第5問 | 有形固定資産 | 42.4% |
| 第6問 | 有価証券 | 60.5% |
| 第7問 | 負債・借入金 | 72.9% |
| 第8問 | 計算書類の表示 | 83.1% |
| 第9問 | 連結会計 | 28.7% |
| 第10問 | キャッシュ・フロー計算書 | 20.7% |
| 第11問 設問1 | 財務指標 | 89.2% |
| 第11問 設問2 | 固定比率・安全性分析 | 69.4% |
| 第12問 | 労務費・賃率差異 | 39.5% |
| 第13問 | 事業部制・業績評価 | 63.1% |
| 第14問 | 資金繰り表 | 73.2% |
| 第15問 | モジリアーニ・ミラー理論 | 85.0% |
| 第16問 | 企業間信用 | 80.9% |
| 第17問 | 差額原価・意思決定会計 | 81.5% |
| 第18問 | 設備投資・NPV | 39.8% |
| 第19問 | ポートフォリオ理論 | 46.2% |
| 第20問 | ROA・ROE・財務レバレッジ | 22.9% |
| 第21問 | M&A・企業評価 | 56.1% |
| 第22問 | 残余利益モデル | 23.6% |
| 第23問 | オプションの時間価値 | 23.2% |
| 第24問 | リスクマネジメント | 88.9% |
03難問ランキング
キャッシュ・フロー計算書に関する問題です。 営業・投資・財務活動の区分だけでなく、 現金及び現金同等物の定義や、支払時点と取得時点の関係を 正確に判断する必要がありました。
ROA、ROE、負債利子率の関係を問う問題でした。 ROAと負債利子率が同率である場合には、 負債比率を変えてもROEが変わらないことを 理論的に理解している必要がありました。
オプション価格を、本源的価値と時間価値に分解する問題でした。 コールとプットの本源的価値をそれぞれ計算し、 市場価格との差額を比較する必要がありました。
残余利益モデルによる株主価値の算定問題でした。 各期の期首自己資本と資本コストを用いて残余利益を求め、 現在価値へ割り引く必要がありました。
取得直後の連結貸借対照表に関する問題でした。 子会社株式の消去、のれん、非支配株主持分、 親会社利益剰余金の扱いを整理する必要がありました。
決算整理後残高試算表と貸借対照表における 勘定科目の表示位置を問う問題でした。 評価勘定、負債、純資産の控除項目を区別する必要がありました。
直接労務費、間接労務費、手待時間、実際賃金発生額、 賃率差異を組み合わせた原価計算の問題でした。 予定額と実際発生額を区別する必要がありました。
設備取替投資のNPVを求める問題でした。 操業費削減による税引後キャッシュ・フローと、 減価償却費増加によるタックスシールドを 合算する必要がありました。
04正答率が高かった問題
| 順位 | 問題 | 主な出題テーマ | 正答率 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 第11問 設問1 | 財務指標 | 89.2% |
| 2位 | 第24問 | リスクマネジメント | 88.9% |
| 3位 | 第15問 | モジリアーニ・ミラー理論 | 85.0% |
| 4位 | 第8問 | 計算書類の表示 | 83.1% |
| 5位 | 第17問 | 差額原価・意思決定会計 | 81.5% |
| 6位 | 第16問 | 企業間信用 | 80.9% |
| 7位 | 第2問 | 消費税の会計処理 | 76.1% |
| 8位 | 第14問 | 資金繰り表 | 73.2% |
財務分析、リスクマネジメント、MM理論、計算書類の表示、 差額原価など、過去問で繰り返し問われている基本論点については、 多くの受験生が確実に得点できていました。
05受験生の解答傾向
会計制度の基本問題は比較的安定
計算書類の表示や消費税の処理など、 基本ルールを直接問う問題では高い正答率となりました。 基礎知識の定着は進んでいると考えられます。
ファイナンス分野で正答率が急落
ROE、残余利益モデル、オプションなど、 公式の意味と計算手順を理解する必要がある問題で 多くの受験生が苦戦しました。
キャッシュ・フローの区分判断に弱さ
キャッシュ・フロー計算書について、 現金及び現金同等物の範囲と、営業・投資・財務活動の区分を 個別に覚えているだけでは対応できませんでした。
典型計算問題は比較的得点できた
差額原価や資金繰り表など、 計算手順が明確な問題では高い正答率となりました。 反復演習の効果が表れやすい分野です。
06令和8年度の出題傾向
財務会計・制度会計
- 法人税・消費税
- 貸借対照表表示
- 金銭債権・貸倒引当金
- 有形固定資産
- 有価証券
- 負債・借入金
- 連結会計
- キャッシュ・フロー計算書
管理会計
- 財務指標分析
- 労務費・賃率差異
- 事業部制・業績評価
- 資金繰り表
- 差額原価
- 意思決定会計
- 設備投資・NPV
ファイナンス
- モジリアーニ・ミラー理論
- 企業間信用
- ポートフォリオ理論
- ROA・ROE
- M&A・企業評価
- 残余利益モデル
- オプション
- リスクマネジメント
今年度は、制度会計、管理会計、ファイナンスの各分野から 幅広く出題されました。
特に後半はファイナンス問題の比重が高く、 財務・会計を単なる計算科目ではなく、 企業価値と意思決定を考える科目として理解しているか が問われました。
07今回の結果から見える受験生の課題
課題1 ファイナンス分野を後回しにしている
NPV、ROE、ポートフォリオ、企業価値評価、オプションなどは、 苦手意識から学習を後回しにしやすい分野です。 しかし、近年は合否を分ける重要分野となっています。
課題2 公式の暗記に偏っている
ROEや残余利益モデルでは、公式を覚えているだけでなく、 どの利益・資本・利率を使用するのかを判断する必要があります。 公式の導出過程と経済的意味まで理解することが重要です。
課題3 キャッシュ・フローと損益を混同している
発生主義による損益と、実際の現金収支の違いを 正確に理解できていないケースが見られました。 貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の つながりを整理する必要があります。
課題4 計算条件の読み落としがある
税率、現価係数、期首・期末、未払額、機会原価など、 問題文中の条件を一つ読み落とすだけで誤答になります。 計算前に条件を整理する習慣が必要です。
課題5 60分で解く訓練が不足している
財務・会計は、解説を読めば理解できても、 本試験時間内に処理できなければ得点につながりません。 難問を後回しにする判断と、基本問題を短時間で処理する力が必要です。
08次年度に向けた学習方法
-
財務諸表のつながりを理解する
貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書を 別々に覚えるのではなく、取引が3つの表へ どのように反映されるかを確認しましょう。
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過去問を最低3回転する
財務・会計は、同じ論点が形を変えて繰り返し出題されます。 過去問完全マスターなどを用い、 最低3回転して解法を定着させましょう。
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ファイナンスを早期に学習する
NPV、CAPM、ROE、企業価値評価、オプションなどは、 直前期にまとめて習得することが困難です。 学習初期から継続的に取り組みましょう。
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公式を言葉で説明する
数式を覚えるだけでなく、 分子・分母が何を意味するのか、 数値が増減すると結果がどう変わるのかを説明します。
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計算過程を省略しすぎない
暗算だけで処理すると、単位や符号のミスが増えます。 必要な中間計算を残し、見直しやすい解答手順を作りましょう。
-
60分演習を繰り返す
問題ごとの制限時間を決め、 分からない問題を後回しにする判断を練習します。 本試験形式の演習を定期的に実施しましょう。
※正答率、平均得点および解答傾向は、KEC自己採点フォーム回答者のデータに 基づく集計であり、実際の全受験者の結果とは異なる場合があります。



