令和8年度 中小企業診断士 第1次試験 「経営情報システム」全体レビュー
令和8年度 中小企業診断士 第1次試験
「経営情報システム」全体レビュー
平均得点、問題別正答率、難問ランキング、受験生の解答傾向を分析し、 今年度の試験で明らかになった課題と、次年度に向けた具体的な学習方法を解説します。
令和8年度中小企業診断士第1次試験「経営情報システム」について、 本試験問題・協会公表正答と、KEC自己採点フォーム271件の回答データをもとに分析しました。
今年度は全25問・各4点・100点満点です。 正答率80%を超える基本問題がある一方、 20%を下回る難問も存在し、問題ごとの難易度差が非常に大きい試験 となりました。
01全体結果
平均得点は57.4点となり、60点の科目合格ラインをわずかに下回りました。
ただし、全体的に一様に難しかったわけではありません。 非常に正答率の高い問題と、20~30%台まで落ち込む難問が明確に分かれた ことが今年度の大きな特徴です。
- 基本IT用語でも、具体例や比較形式になると正答率が低下
- RAID・クラウド・UX/UIなどの類似概念の区別で差がついた
- データベース・SQLは標準レベルだが、一定の理解が必要
- セキュリティは単語暗記よりも「配置・機能」の理解が求められた
- AI・DX・最新ガイドラインなど新しい論点も積極的に出題された
02問題別正答率
| 問題 | 主なテーマ | 正答率 | 難易度目安 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | NFC | 69.7% | 標準 |
| 第2問 | RAID | 36.9% | 難 |
| 第3問 | 仮想化技術 | 50.9% | やや難 |
| 第4問 | ニモニックコード | 19.6% | 難 |
| 第5問 | UX/UI | 28.4% | 難 |
| 第6問 | クラウドサービス | 38.7% | 難 |
| 第7問 | データベース・正規化 | 54.6% | やや難 |
| 第8問 | SQL | 54.2% | やや難 |
| 第9問 | 通信プロトコル | 65.7% | 標準 |
| 第10問 | RASIS | 73.1% | 易 |
| 第11問 | IT投資評価・CMMI等 | 18.8% | 最難関 |
| 第12問 | ブロックチェーン等 | 61.6% | 標準 |
| 第13問 | AI・ローコード等 | 55.7% | やや難 |
| 第14問 | 不正のトライアングル | 86.0% | 易 |
| 第15問 | ソフトウェアテスト | 71.2% | 易 |
| 第16問 | アジャイル開発 | 84.5% | 易 |
| 第17問 | デジタル著作物・ライセンス | 58.7% | 標準 |
| 第18問 | IT投資・TCO | 70.8% | 易 |
| 第19問 | EVM | 70.8% | 易 |
| 第20問 | デジタルスキル標準 | 63.5% | 標準 |
| 第21問 | RFI・RFP・PoC | 59.0% | 標準 |
| 第22問 | サイバー攻撃 | 86.3% | 易 |
| 第23問 | DMZ・WAF等セキュリティ | 31.7% | 難 |
| 第24問 | AI・混同行列 | 64.9% | 標準 |
| 第25問 | AI事業者ガイドライン | 58.3% | 標準 |
第14問・第16問・第22問では正答率が84%を超えた一方、 第4問・第11問では20%を下回っています。
つまり、今年度は 「全25問を均等に解く試験」ではなく、難問を見極めながら基本・標準問題を確実に拾う試験 だったといえます。
03難問ランキング TOP10
BSC、CMMI、COBIT、ISMSなど、複数のフレームワークを横断的に比較する問題でした。
誤答が特定の1肢に集中せず、ほぼ全選択肢に分散した点も特徴です。
- 個別用語の暗記では対応しにくい
- 各フレームワークの目的を整理する必要がある
- 似た概念の横断比較が重要
日本をJP、米国をUSとするように、 対象を連想しやすい略称で表現するコードがニモニックコードです。
約半数が、コードの各桁に意味を持たせる方式の選択肢を選びました。
- コード体系を名称だけで暗記
- 具体例から方式を判別する力が不足
- 類似コードを比較する学習が必要
アダプティブデザイン、ページネーション、メディアクエリ、 レスポンシブデザイン、ワイヤーフレームを比較する問題でした。
- 似たWeb関連用語を混同
- 用語を聞いたことがあるだけでは不十分
- 具体的な利用場面まで整理する必要がある
DMZ、WAF、ファイアウォール、サンドボックスを、 実際のネットワーク構成に当てはめて判断する問題でした。
- 単語の意味だけでなく配置場所が重要
- 何を防御する技術なのかを理解する必要
- セキュリティ構成図での学習が有効
RAID 0・1・5・10について、 ストライピング、ミラーリング、パリティなどの違いを判断する問題でした。
- RAID 0と1の混同
- RAID 5の耐障害性を誤認
- 比較表による整理が有効
IaaS・PaaS・SaaSについて、提供者と利用者の責任分界点を問う問題でした。
- サービス名称だけの暗記では不足
- OS・ミドルウェア・アプリの管理主体を整理する必要
- 「誰が責任を持つか」がポイント
VDI、タイムシェアリング、ストレージ仮想化など、 複数の技術を比較して判断する問題でした。
GROUP BY、ORDER BY、SUM、COUNTの動きを読み取り、 出力されるデータの意味を判断する問題でした。
主キーや関数従属をもとに、 第1正規形ではあるが第2正規形ではない表を判断する問題でした。
AIの民主化、API、シャドーIT、モダナイゼーション、 ローコード開発など比較的新しいIT用語が並びました。
04正答率が高かった問題
| 順位 | 問題 | テーマ | 正答率 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 第22問 | サイバー攻撃 | 86.3% |
| 2位 | 第14問 | 不正のトライアングル | 86.0% |
| 3位 | 第16問 | アジャイル開発 | 84.5% |
| 4位 | 第10問 | RASIS | 73.1% |
| 5位 | 第15問 | ソフトウェアテスト | 71.2% |
| 6位 | 第18問 | IT投資・TCO | 70.8% |
| 7位 | 第19問 | EVM | 70.8% |
| 8位 | 第1問 | NFC | 69.7% |
難問がある一方で、基本的なIT知識や定番論点では70~80%台の正答率となっています。
経営情報システムで60点を確保するためには、 こうした「多くの受験生が取れている問題」を確実に得点すること が最優先です。
05受験生の解答傾向
① 似たIT用語の区別に苦戦
RAID、UX/UI、コード体系、クラウドなど、 複数の似た用語が同時に提示される問題で正答率が低下しました。
単語と定義を1対1で覚えるより、 「AとBは何が違うのか」を説明する比較学習 が必要です。
② 基礎論点でも「具体例」にすると難易度が上がる
RAIDやクラウド、データベースなどは従来からの定番論点ですが、 単純な用語問題ではなく、具体的な説明を判断させる形式になると正答率が低下しました。
③ フレームワークの横断整理が不足
BSC、CMMI、COBIT、ISMSなどをまとめて問う第11問では、 正答率18.8%まで低下しました。
個別暗記ではなく、 「目的・対象・使われる場面」 の3点で整理することが重要です。
④ セキュリティは「用語」より「仕組み」で差
DDoSなど基本的な攻撃手法を問う第22問は86.3%でした。 一方、DMZ・WAF・FWの配置まで問う第23問は31.7%です。
「用語を知っている」から 「どこに置き、何を防ぐのか理解している」 へのステップアップが必要です。
⑤ AI・DXなど最新論点への対応が必要
AIの民主化、デジタルスキル標準、混同行列、 AI事業者ガイドラインなど、新しいテーマも多数出題されました。
過去問だけで学習を完結させず、 直前期に最新IT・AI・DX論点を更新する学習 が必要です。
06今回の結果から見える受験者の課題
課題1 単語暗記だけで終わっている
「RAID 1=ミラーリング」「SaaS=ソフトウェア」のような短い暗記だけでは、 選択肢の細かな誤りを見抜けません。
課題2 類似概念を比較していない
RAID 0・1・5・10、SaaS・PaaS・IaaS、 POP・IMAP、RFI・RFPなど、 似た概念を横並びで整理する必要があります。
課題3 データベース・SQLを苦手分野として放置している
正規化やSQLは、初見では難しく感じますが、 演習量を増やすことで得点しやすくなる分野です。
課題4 セキュリティを単語集として覚えている
WAF・ファイアウォール・DMZ・サンドボックスなどは、 ネットワーク構成図の中で役割を確認する必要があります。
課題5 最新IT論点の更新が不足
AIやDX分野は変化が速く、 数年前の教材だけでは対応しにくい論点が出題されています。
07次年度に向けた具体的な学習方法
過去問は「正解番号」ではなく全選択肢を復習する
過去問を解いた後は、正解肢だけではなくすべての選択肢を確認します。
- なぜ正解肢が正しいのか
- 誤答肢のどの部分が間違っているのか
- どの単語へ置き換えれば正しい文章になるのか
- 似た用語との違いは何か
「正解はウ」ではなく、「他の4肢を切れる」状態 を目標にします。
類似用語は比較表で整理する
- RAID 0・1・5・10
- SaaS・PaaS・IaaS
- TCP・UDP
- POP・IMAP
- RFI・RFP・RFQ・PoC
- ブラックボックステスト・ホワイトボックステスト
- WAF・FW・IDS・IPS
- 適合率・再現率・F値
「Aとは何か」だけでなく、 「AとBはどこが違うか」を30秒で説明できる状態 に仕上げます。
データベース・SQLは捨てない
正規化では、実際の表を使って以下の順番で確認します。
- 主キーは何か
- どの項目がどの項目に関数従属しているか
- 部分関数従属があるか
- どのように表を分割すればよいか
SQLは最低限、次の基本構文を読めるようにします。
- SELECT
- WHERE
- GROUP BY
- HAVING
- ORDER BY
- COUNT
- SUM
コードを暗記するより、 「このSQLを実行するとどんな結果が出るか」 を考える練習が有効です。
計算問題はむしろ得点源にする
今年度は、TCO、EVM、AIの混同行列などの計算問題で比較的高い正答率となりました。
- TCO
- EVM
- 稼働率
- 通信速度
- データ容量
- 適合率
- 再現率
- F値
「計算だから捨てる」のではなく、公式を理解して確実に4点を取る という方針が有効です。
セキュリティは構成図を書いて理解する
WAF・FW・DMZ・IDS・IPSなどは、文章だけでなく図で配置を確認します。
- どこに配置するか
- 何を監視・遮断するか
- ネットワーク層かアプリケーション層か
- 攻撃を検知するのか、防御するのか
最新IT・AI・DX論点は直前期に更新する
基本論点は過去問で固めたうえで、試験直前期には最新テーマを追加します。
- 生成AI・AIガバナンス
- AI事業者ガイドライン
- デジタルスキル標準
- クラウド・エッジコンピューティング
- 最新のサイバーセキュリティ
- DX・データ活用
- ブロックチェーン・スマートコントラクト
過去問だけで学習を完結させない ことが経営情報システムでは特に重要です。
0860点を取るための得点戦略
ここに、第13問、第17問、第21問、第25問などの 正答率50%台後半の問題から3問取れば、 15問正解=60点に到達します。
つまり、第11問18.8%や第4問19.6%のような超難問を正解しなくても、 十分に60点を狙うことができます。
- 正答率70~80%台の問題は絶対に落とさない
- 正答率50~60%台の標準問題を過去問演習で拾えるようにする
- 20~30%台の難問は本試験中に深追いしない
- 分からない問題は一度保留し、取れる問題を先に処理する
※正答率、平均得点、中央値、最高得点、最低得点および解答傾向は、 KEC自己採点フォーム271件の回答データに基づく集計であり、 実際の全受験者の結果とは異なる場合があります。



